ゴルフは続くよどこまでも #17「ゴルフボールとの会話」
変な話をする。
私は10代の頃、まぁしょうもないゴルファーだった。
まだゴルフも下手くそだったのに、ミスショットすると一丁前にふてくされたり激昂したりして、周りに迷惑をかけていたと思う。
でも本当にしょうもないなりに、否、しょうもなかったからこそ かもしれないが、あることを発見した。
感情はボールに伝わるのだ。
怒っているとほぼ絶対に良いショットは出ない。
クラブ選択に自信がなかったり、池に入るんじゃないかと不安になったり、後続組が早いからと焦ったり。
平常心でない状態でスイングすると、結果も平常ではない。
頭や心で考えていることが、手からクラブに伝わり、クラブからボールへと伝播するようだ。
だから、解決方法も編み出した。
それは、ハッタリでもいいから、アドレスしたら、自分や結果を信じて、打つ。決めたことを勇気を持って実行すること。
これも、手からクラブへ、クラブからボールへと伝わっていくイメージだ。
こうすると、不思議とミスが減る。
たかが気持ちひとつで結果が変わるなら苦労しない、と思う読者もいるかもしれないが、まぁもう少しつきあってほしい。
自分を信じて打つと、たとえミスショットが出ても自分の責任だと素直に受け入れられる。
感情的になっていないから、すぐに反省もできる。
そして、すぐに気持ちを切り替えることもできる。
そういう経験を繰り返しているうちに、自分からボールへと伝えていた感情が、今度はゴルフボールから感情が伝わってくるようになる。
変な話だが、ある程度のレベルまでいくと、ゴルフボールと会話できるようになるのだ。
いや、"会話"というと大袈裟かもしれない。けど私は確かに、ゴルフボールと向き合うとき、ボールと意思の疎通をしている。
「このライだと低い弾道でしか飛ばないよ」とか「大丈夫、信じてるから任せるよ」とか。
自分が思ったのと違うボールが出たのに、木に当たってフェアウェイに戻ってきたボールは、なんとなく「へへへ」と誇らしそうであったり。
ただ、ボールの声や感情表現はとても小さい。
だから、心が落ち着いているときしか聞こえない。
雑念を払い、傾聴する余裕がこちらにあるときにのみ、ボールは感情をほのかに伝えてくる。
変な話だと思うが、きっとこの感覚がわかるプレーヤーはいるんじゃないだろうか。
[プロフィール]
ヒッティ
1987年生まれ。ニュージーランド在住。幼少期からゴルフを始め、一時はプロを目指すも、今なおアマチュアとしてゴルフを愛し続けている。現在のハンデはゼロ以下。日本とニュージーランドで女子ミッドアマ チャンピオンのタイトルを獲るなど、珍道中を邁進中。