ゴルフは続くよどこまでも#7「パターは恋人」
パターは恋人
14本ある多種多様なクラブのうち、もっとも自由度の高いクラブがパターといえる。
ヘッドが棒状のもの、真四角のもの、ツノがあるもの、ラインがついているもの、重いもの、とてつもなく大きいもの・・・
また、打ち方も基本はあるものの、グリップのしかたにも正解がない。
諸説あって、諸説が正しい。要は、入ればなんでもいいのだ。
だけど、その自由度の高さと正解が存在しないことゆえに、あれこれ悩むのも事実である。
昔 大学のゴルフ部の先輩が、あーでもない、こーでもないと頭を悩ませていた。
その先輩は(私と違って)とても繊細な人で、イップス※になりかけていた。
先輩はパターは3種類ほど持っていたが、しょっちゅう他の部員のパターを借りては、部室のパッティングマットで試し打ちしていた。
私は当時、ツーボールという大きいヘッド形状のパターを使っていて、「まっすぐ引いて、まっすぐ打つ」ということだけに集中していた。
手首から先を使いたくなかったから、肘を張ってグリップはガッチガチに硬く握っていた。
あるとき、ほかの先輩がぼそっと革新的なことを言ってのけた。
「パターをすぐ替える人は、恋人もすぐ替えるんだよ」
たとえば、上手くいかなかったら、すぐに新しいパートナーに乗り換える。
でもいきなり替えると不安だから、保険に2、3持っておく。
そして新しく登場するものがカッコよく見えて、ちょっと試す。
何がいいのかわからなくなったら、一旦離れてリフレッシュすること。
要は、入ればなんでもいいのだ。(そういう意味ではない)
ゴルフも恋も、迷いだらけで正解はないのだ。
ガッチガチのグリップだった私は、「もしかして私の恋は、束縛が強くて、重たいのでは」と少しフォームを見直した。
今でも、パターを買い替えようかなと欲が出たときに、「パターを替える人は恋人もすぐ替える」という呪詛を思い返し、初心に返るのである。
※イップス:スポーツの動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害のこと(by Wikipedia)。ゴルフでは、パッティングの際にストロークができないことを指すことが多い。
[プロフィール]
ヒッティ
1987年生まれ。ニュージーランド在住。幼少期からゴルフを始め、一時はプロを目指すも、今なおアマチュアとしてゴルフを愛し続けている。現在のハンデはゼロ以下。日本とニュージーランドで女子ミッドアマ チャンピオンのタイトルを獲るなど、珍道中を邁進中。