ゴルフは続くよどこまでも #29「共感して幸せ」
なんとびっくり、もう師走である。
日本のゴルフツアーは閉幕し、ツアープロたちは来シーズンに向けて予選会に出たり、テレビ出演をしたり、スポンサーのイベントに参加したり、それはそれで忙しい時期だ。
世の中では「推し」という言葉が流行りから定着しつつあるが、私は幅広くツアー情報を追うのが好きなので、もうちょっとやわらかく、多くの選手のファンだ。
それでも特に話したことがある、観戦したことがある、あるいは同郷であるとかちょっとした接点で、親近感を覚え、すぐファンになってしまう。
同年代の選手たちが結婚したり、出産したり、休養したり、引退したり、久々の勝ち星を上げたりすると、勝手に自分の人生と重ね合わせていろいろ感じ入るし、さらにベテランの人たちの奮闘を見ると尊敬するし、自分より若い子が活躍すると親目線で応援したくなってしまう。
今年の日本ツアーは特に話題が多く、熱視線を送ってひとりひとりの選手に共感しまくった気がする。
NZはというと、リディア・コー選手の3度目の世界ランク1位獲得と、欧州ツアーで年間ランク2位で締め括ったライアン・フォックス選手の活躍に沸いた。
NZ国内は規模の大きいプロツアーがないので、優秀な選手は海外に行くのが自然な流れだ。
強い選手たちが身近に少ないのはさみしいことだが、小さい島国から世界に羽ばたいていくプロをみんな応援している。
想像だが、きっと沖縄や北海道出身ゴルファーも似たような境遇で、地元から声援を受けているんだろう。
私のホームコース、ティティランギゴルフクラブで20年以上メンバーのおばちゃんは、「昔リディアが8歳でこのコースを回ったとき、15番ホールのティーショットはイエローティー(レディスティー)からでも谷を越えられなかったんだよ」と近所の子の昔話のようにエピソードを語る。
リディア・コー選手は韓国生まれで、6歳の時に家族と共にNZに移住した。
プロ大会の史上最年少(当時)で優勝、16歳での特例のプロ転向、史上最年少世界一到達、メジャー最年少優勝、2度のオリンピック出場で銀と銅のメダルを獲得など、アマチュア時代から今日に至るまで数々の金字塔を打ち立てている。
今年2022年は、LPGA史上最高額がかかった最終戦を含めて3勝を挙げ、最長ブランクをはさんで3度目の世界ランク1位を奪還し、年間女王とプレーヤー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。
もう「史上最◯◯」の記録づくしで枚挙にいとまがない。
とんでもない数のタイトルを手にしているのに、性格はまるっきり”キウイ”という感じで、素朴で気さくな人柄は好感度も抜群に高い。
まだ25歳の彼女は、大会優勝などで積み上げていくポイントも26持っていて、28ポイントで認められるホール・オブ・フェイム(殿堂入り)も史上最年少を更新するのではと目されている。
だが本人はGolf Channelのインタビューで、「殿堂入りはそうなれたら嬉しいし、とても名誉なことだけれど、あと少しで記録に残るからといって、自分をプッシュしたくない。あと1ポイントだとしても心持ちは変えず、今その時にベストを尽くしたい」(ヒッティ意訳)と語っている。
グッとくるのはこういう言葉や姿勢である。 イチ競技ゴルファーとしては「なるほど」と師の金言を賜る思いだが、やはり隣国出身でNZ育ちの「リディアちゃん」とは勝手につながりを感じ、イチおばちゃん目線で「えらいわねぇ」という感心の情が湧いてくる。
「2022年は私のキャリアのなかでも素晴らしいシーズンのひとつだった」とリディアちゃんが言うので、私もそんな気になっている。
来年も、彼女をはじめたくさんのゴルファーたちに幸せが訪れますように。
ヒッティ
1987年生まれ。ニュージーランド在住。幼少期からゴルフを始め、一時はプロを目指すも、今なおアマチュアとしてゴルフを愛し続けている。最近のハンデは0.7。日本とニュージーランドで女子ミッドアマ チャンピオンのタイトルを獲るなど、珍道中を邁進中。