ゴルフは続くよどこまでも #14「ゴルフは記憶のスポーツ」
「1番のティーショットはスライスしたんだけどラフで止まってさ、セカンドは木の枝にちょっと当たりそうだったんだけど、うまくグリーン手前まで持っていったわけ。そしたらチャクって、カップまで15メーターも残っちゃって、そこからスリーパットよ。もう今日はダメだーって思ってたけど、2番ホールはさ……」 こんな調子で、その日の18ホールをイチから語りたがるゴルファーがいる。 よほどのお友達でない限り、ずっと耳を傾けるのはしんどい。 私の場合、例えばこれがよほどのお友達の話でも、てきとうに調子を合わせて右から左へ受け流す。正直、アンタのゴルフの詳細に興味はない。 ただ、目標があって上を目指している人のゴルフは別だ。
「ゴルフは記憶のスポーツ」と聞く。 記憶といってもいろいろある。
コースの記憶。ストラテジーの記憶。自分の経験の記憶。
一度回ったコースは二度と忘れないというプロもいる。
また、体が覚えていて頭で意識せずとも自然に動作ができる”マッスルメモリー”というのもある。 ツアープロや上級者が、ミスショットの”後”に素振りをしている光景を見たことはないだろうか。 あれは「こう打ちたかった」とか「次回はこういう風に打とう」と、良いイメージを上書きしている作業だ。
心理学の話では、人間は良かったことよりも悪かったことのほうが強く記憶に残る性質があるそうだ。
失敗から学び、二度と繰り返さないようにという本能は理にかなってはいるが、時にはミスショットの印象を引きずってしまい、裏目に出てしまうこともある。 だから、良かったショットの感触を存分に思い出し、記憶に留めておくのもとても重要なことだ。
つまり、自分のゴルフを語る際に「ダメ自慢」をしてしまう人は上達が難しい。
失敗をいつまでも嘆いたり、面白おかしく語ったりしても、悪い記憶を定着させるだけだからだ。
どんなラウンドでも、良かった点、良かったショットを振り返ること。
スウィングで気をつけていることができたのか?
それとも芝の状態が良かったのか?
プレッシャーの有無が影響したのか?
必要なのは、明日につながる分析だ。
もしそれができないくらい打ちのめされたなら、スコアカードをビリビリっと破いて、サッサと忘れてしまおう。 上達するゴルファーは、ダメな点ばかり愚痴るのはマナー違反であることも心得ているものだ。
[プロフィール]
ヒッティ 1987年生まれ。ニュージーランド在住。幼少期からゴルフを始め、一時はプロを目指すも、今なおアマチュアとしてゴルフを愛し続けている。現在のハンデはゼロ以下。日本とニュージーランドで女子ミッドアマ チャンピオンのタイトルを獲るなど、珍道中を邁進中。