ゴルフは続くよどこまでも #34「東京のゴルファーたち」
東京に住んでいたときにはどこでも電車で出かけていたが、一時帰国などでたまの滞在となると荷物もあったりして、タクシーをよく使うようになった。
アプリでどこでも呼べて、プロの運転手が来てくれるなんて便利この上ない。
最近の都内のタクシーは助手席の後ろにタブレット端末が取り付けられていて、目まぐるしく宣伝広告が流れてくる。
やれやれ。 街を歩いていても、電車に乗ってもバスに乗っても、ポスター・看板・電子広告。
テレビをつけて何かを視聴している間に、番組のスポンサーCMが入るのならまだ理解できる。
だが私たちはただ暮らしているだけで何かを見せつけられ、不本意であっても注意を引かれ、無意識に入ってくるもの、意識的に取り込むもの、その情報の優位性を見極め取捨選択しなければならない。 これでは現代人の脳が疲れてしまう。 ストレスの多い環境を改善しようともがきながら、自分たちでストレス環境を作り上げているーーー。
そう脳内で悶々と悪態を吐きつつ、タクシーの電子広告をぼんやり眺めていたら、ふとゴルフ場の映像が。
ゴルフカートに取り付けられた電子板に広告が乗せられる、という宣伝だった。
CM動画に登場する男女たちは、「コース間の移動中に見ちゃう」「会話に困ったときなんか助かるよね」などとコメントしているではないか。
たわけが! ゴルフの場に及んでまで情報を追わなければいけないなんて!
ゴルフの最大の利点のひとつはストレスフルな日常から離れて、緑の中で体を動かすこと! 会話に困るだと!? そんな人間関係の面倒くさい部分をゴルフ場に持ち込むことなんぞ愚の骨頂! 自分のゴルフに集中すればよろしッ! ナイスショット、ナイスオン、ナイスリカバリー、ナイスマナー! その掛け声ができないなら天気の話でもすればよろしッ!
久しぶりの東京訪問は自分の短気ぶりが爆発した。
今回の旅程でゴルフバッグを持って来られなかった、ラウンドを一度もできなかったことへの八つ当たりである。
こんな私と鉢合わせするゴルファーは不運極まりない。 さぞストレスフルなラウンドになることだろう。
ヒッティ
1987年生まれ。ニュージーランド在住。幼少期からゴルフを始め、一時はプロを目指すも、今なおアマチュアとしてゴルフを愛し続けている。最新のハンデは0.9。日本とニュージーランドで女子ミッドアマ チャンピオンのタイトルを獲るなど、珍道中を邁進中。