ゴルフは続くよどこまでも #10 「歯医者の苦悩」

先日の一時帰国の際に、歯医者に行った。

恥ずかしながら、むし歯の治療痕のある奥歯が欠けてしまっていたのだ。

 

ちなみに、ゴルファーに限らず、アスリートは力を入れるとき 無意識のうちに奥歯を噛み締めるので ボロボロになりやすいらしい。

ドライバーを”マン振り”している方や、頻繁にゴルフをしている方などは注意されたい。

 

さて、立派な人は定期検診などするものだろうが、私は非立派な人間なので、数年ぶりに新しい歯科医院に赴いた。そこで歯科技術の進化に驚いた。

 

まずレントゲンを撮る。すると即、電子カルテができあがる。

 

次に治療痕の詰め物を取ったら、小さなカメラで口の中を撮影する。写真ではなく動画だ。

 

撮影が完了したら、もうコンピュータの中に私の凹んだ歯が 3Dで再現されている。

それを先生がカチカチとクリックして、仮想の詰め物の形をチェックする。

 

数時間後には、3Dプリンターのようなもので作成された歯型ができあがっていて、最後に噛み合わせを整えたら終了である。

 

私は感動した。

 

歯医者さんが私の私の欠けた歯を治す工程は、まさにゴルフクラブ職人あるいはクラブフィッターがスイングを分析して最適な道具を提供するそれと、完全に一致していた。

 

クラブフィッターも、持ち球、今の悩み、ターゲットなどを問診して、スイングやボール打点などを動画で分析し、ピッタリ合ったクラブを提供してくれる。

 

”「ゴルフとおんなじだ」シリーズ” である。

 

思わず「ひゃ〜 医療の進化はすごいですね。追いつくのが大変でしょう」と歯科医師に言うと、

 

「そうなんですよ」と彼はため息をついた。

 

「この機材を入れるのに1千万くらいかかる。それを覚えて使いこなせるようになってきたら、また新しい機材が出てきて、有料でアップデートしなくてはならない。

新しい技術に追いつけなくて引退する医師もいるし、開業医ではペイできないから病院勤めを選択する若い医師も増えているそうです」

 

そうなのか。無邪気に技術革新に感動していた私には予想外な答えが返ってきたが、ゴルフのレッスンプロも似たような状況である。

 

最新のカメラ、計測機器、スイング解析システムなどを導入するのは高額になるため、個人では限界がある。

計測器のサブスクリプションもあるが、年配のレッスンプロが技術革新についていくのは容易ではないはずだ。

 

レッスンやフィッティングを受けるゴルファーからすると、最新のテクノロジーにはいつだって心躍るものだが、世の中が便利になっていく一方で、サービス提供側の苦労を考えさせられた出来事であった。

 

[プロフィール]

ヒッティ

1987年生まれ。ニュージーランド在住。幼少期からゴルフを始め、一時はプロを目指すも、今なおアマチュアとしてゴルフを愛し続けている。現在のハンデはゼロ以下。日本とニュージーランドで女子ミッドアマ チャンピオンのタイトルを獲るなど、珍道中を邁進中。

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