ゴルフは続くよどこまでも #22「アマチュア・キャット・オーナー」
ついに。子猫がうちにやってきた。
私は大の動物好きで、小学生のころから「いきもの係」「飼育委員」など歴任し、自宅にも過去に犬・猫・鳥など一時保護した動物がいた。
そんな私でも外国でペットを飼うのは初めてである。
12歳の頃に飼い始めたダックスフントの「ポプリ」は、しつけもそこそこに溺愛し甘やかしたが、本当にかわいがっていた。
ただ昔から海外志向が強く、社会人を辞めた後数年をアメリカで過ごした私は、愛犬の最期に立ち会うことができなかった。
勝手な事情とはいえ、涙が止まらなかった。
彼女がこの世を去ってから8年経つが、ときどきポプリが夢に出てくる。 そして目が覚めるとまた涙が出てきてしまう。
転勤族だったり、海外に行ったり来たりする生活をしている人間には、ペットを飼うことは難しい。
プロゴルファーは国内・海外各地で開催される試合に出るために転戦の日々。
面倒を見てくれる家族やスタッフが常にいなければ、プロ自身がペットを飼うのは不可能だ。
もう、ポプリみたいに死に別れるのはたくさん。
夫も出張が多く、私も年に何度か日本に行くライフスタイルでは、ニュージーランドでペットを飼うのはとうてい無理だと思っていた。
ところがパンデミックが、ライフスタイルと我々の意識を変えた。
ニュージーランドは国境を閉ざした。 夫はリモートワーク。 私も2年半も日本に帰れなかった。 子供を作るのにも迷いが生じてきた。
そして私はもう、ツアープロを目指していない。
もう、猫を飼うしかない!
そう一大決心をしたものの、猫の飼育についてほぼ素人だったため、友人、同僚、ペットストアの店員、ブリーダー、YouTubeからいろいろな情報を収集した。
ブリーダーさんに餌のことをたずねると「ドライフードと ”Raw food” をあげている」と返事が来た。 ”Raw” とはつまり ”生肉” のことである。
スーパーのペットフードコーナーには、チキン、ポーク、ビーフはもちろん、ラム、ターキー、ポッサム、はてはオーストラリアのカンガルーの肉を使った餌が売られていた。
まぐろやかつおの猫缶をほおばる日本の猫たちとは、だいぶイメージがかけ離れている。
しかし、先日診てもらったクリニックの獣医いわく、生の肉は栄養が偏っているので子猫には向かないという。
そこでブリーダーが言及していなかった年齢別フードのメリットと、成猫用フードを与えることのデメリットについて教えてくれた。
私はこれまでの人生で、ゴルフの初心者が多くの人に意見を求め、あるいは求めていないのに教えられて混乱するさまを見てきた。
クラブ、スイング、服装、マナー、うんぬん云々。
特にスイングはトップアマ、ティーチングプロ、ツアープロ…個人によって理論や伝え方が異なる。
YouTubeは便利だが、リアルであろうと画面越しであろうと、1人の先生を決めないと大変なことになる。 みんな言うことが違うのだから。
子猫に成猫用の餌を与えることは、いわばジュニアゴルファーにタイガーウッズのスイングを真似しろと言っているようなものではないか…!
そうやってアマチュア・キャットオーナーの私は、おとなしく獣医さんのアドバイスに従うことにした。
ゴルファーも飼い主も、まずは謙虚に自分のレベルを知ることが上達への第一歩である。
ヒッティ
1987年生まれ。ニュージーランド在住。幼少期からゴルフを始め、一時はプロを目指すも、今なおアマチュアとしてゴルフを愛し続けている。現在のハンデはゼロ以下。日本とニュージーランドで女子ミッドアマ チャンピオンのタイトルを獲るなど、珍道中を邁進中。